No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2014年8月28日 焼肉酒家 傳々

8月29日は念に1度の焼肉の日。
肉好きにとっては特別な日であり、前日からすでに上がっているテンションには前夜祭が必要だろう。
そして前夜祭に相応しい焼肉桃源郷が月島にある。
人気焼肉屋さんを模倣することだけに注力し表面上のみ似せたお店が多い中、オンリーワンなお店には心惹かれるもの。
取り扱う肉は目利きの選んだ最高のものだが、特にホルモンに関しては「超」が付く素晴らしさ。
鮮度の良さが一目で分かるほど他店とは違った艶がある。
そして店主・高矢さんのセンスが光る味付けも。
また盛り付けのその美しさにも目を見張る。
繊細さというよりは、1980年代後半から1990年代初頭までのバブリーな雰囲気を残している。
だがそれが嫌味ではなく心地よく感じる範囲に収まっているのも高矢さんのセンスではないだろうか。
時代に流されない王道の焼肉を心行くまで満喫できる名店だ。

“傳々”の真髄を体感する一番の近道は高矢さんのお任せコース。
氷が敷きつけられた上に盛られたハツ刺し、センマイ刺し、レバ、タンユッケ、牛刺しにまずは歓声が上がる。
どれも素材が活きた食感と瑞々しさをもっている。
もちろん、レバと牛刺しは火を入れてから。

塩の焼き物は一番バブリーなラインナップかもしれない。
物が少ないことから貴重な生の黒タンは厚切りで。
サクッとした後のムッチリとした食感に加えて、上物のタン特有の香りが鼻を抜ける。


濃い肉色に適度に入った細かなサシ、ここまでのハラミも黒タンに負けず劣らず貴重な物だ。
だが貴重なだけでなく、口の中を支配するその旨みは何物にも代えがたい。

もう1つはシャトーブリアン
唇で簡単に千切れる繊細さと舌を包み込むような豊かな旨みが溢れる。

“傳々”に行ったのであれば絶対に食べなくてはならないホルモンが2つある。
1つは上ミノ。
ミノの分厚い部分を葱と一緒に焼き上げる。
ザクザクの食感に柑橘系の味付けが絶妙で、まさにオンリーワンなミノ。



もう1つは塩ホルモン。
脂を残したぷりぷりのシマチョウは皮面に隠し包丁が細かく入っていて、元々鮮度が抜群で心地よい食感が更に際立つ。
そして脂の甘みが引き立つおろしポン酢との相性も非の打ちどころがない。


タレのオーソドックスな焼き物はウデとミスジ
どちらもあっさりとしていて、コースの後半でも重さを感じずに肉本来の味わいに集中できる。


リブロースは薄切りですき焼きのように。
インパクトのあるモミダレが卵をまとうと絶妙な塩梅に。
口に広がる肉汁はなんとも贅沢でバブルの再来を彷彿させるw


ホルモンもタレで。
塩でも食べたシマチョウ、そしてレバ。
素材の甘みを十二分に引き立てる味付けが見事としか言いようがない。
その辺にありそうでない、完成度の高いタレホルモン。



これもオンリーワンなのだが、ハラミ大阪風は間違いなくキラーアイテム。
香ばしく焼き上げた最高のハラミに甘めのタレを馴染ませ、胡麻や海苔でアクセントを。
これも高矢さんのセンスが光っている。
片手に持ったご飯が止まらない破壊力だ。





この日の〆は牛骨ラーメン。
しっかりと牛骨のエキスが感じられるが、博多系の細麺も良く合っている。
普段炭水化物控えめ、というかラーメンを滅多に食べないのだが、思わず替え玉をしてしまった位の旨さ。

最後のデザートはなんとスイカ
近所で購入しているそうなのだが、”傳々”で食べるフルーツは何故かいつも旨い。

そしてコーヒーも。
最後まで心が躍り、満足度が高いお任せコース。
このバブリーな時間は焼肉好きを虜にするだろう。