No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2015年12月16日 くいしんぼー山中


11月の終わり頃だろうか。
夕方バイブで震えるスマホに出ると聞き覚えのある声。
12月にかなり楽しみな個体を屠畜するので都合があえば食べに来て欲しい、との連絡だった。
「あいつにこれを食べさせてやりたい」
リスペクトする方にこんな事を思ってもらえるとはなんという幸せだろうか。
ただただ嬉しい。
こんなド素人だが、少しでも認めてもらえた証だと勝手に思ってしまう。
という事で、その素晴らしい個体をベストの日程である屠畜2日後に。

山中さんは仕込みの風景を見せたいと我々の到着を待っていてくれた。
福永さんのところから運んできたままのヒレは脂をたっぷり身にまとっているが、その脂が取り除かれるにつれ、中からは艶やかで美しい肉肌が姿を見せる。





ヒレの次はリブロース
カブリを外すと、濃い小豆色の肉肌で張りのあるブロックに目が釘付けだ。





全ての準備が整い、ここから山中さんのお任せコースが始まるのだが、我々は仕込みの段階で既に興奮が頂点に達している。


炙り牛刺し(フィレミニヨン)
以前は刺身で食べれていたが、今は残念ながら炙ってから。
ヒレは鮮度が良ければ良いほど旨い、という山中さんの言葉通りの味わい。
ねっとりとしたサシが舌に触れた瞬間に溶け出し、上品な甘みが舌の上で広がる。
赤身の味は牛肉というよりむしろ鮪のようなすっきりさ。
そして味の濃さはそれを遥かに超えている。
満足度 5++
(写真は炙る前)




炙り牛刺し(リブロース
普段はランジリだが、この日は初めてリブロース
肉の味の濃さはもちろんだが、それだけではなく、その味の良さは他に類を見ないもの。
特に巻きの部分は柔らかなグミのような食感と、一噛み毎に歯茎を伝って広がる旨みに驚愕するしかない。
満足度 5++
(写真は炙る前)






冷製コンソメスープ
ジュレのようにどろっとしたコンソメで、その味は牛肉そのもの。
液体の牛肉エキスだけをスプーンですくっているようだ。
満足度 5


特選近江牛ヒレステーキ
今まで見てきたことのあるどんなヒレとも違う肉色。
見るものを吸込むような深い小豆色だ。
屠畜2日後で掃除したてであることを実感させる弾力に澄んで純度の高い旨み。
見た目だけじゃない。
その味の方向性が今まで食べてきたヒレとは違う。
満足度 5++



特選近江牛ロースステーキ
昔ながらの味の濃い牛肉の特徴と言われる肉色は小豆色。
そしてこれ以上の小豆色は見たことがない。
山中さんと福永さんが大事にする「照りと粘り」も抜群。
一切のビタミンコントロールを行わずに、個体のポテンシャルで備わったサシ。
それら全てが究極と呼ぶに値する最高のリブロース
噛むことで得られる心地よい弾力。
噛むことで得られる濃縮した肉の旨み。
震える程に旨い。
満足度 6






サラダ

特選近江牛ヒレカツ
最高のヒレで作るふんわりとしたヒレカツが大好きだ。
だが、この福永さんのヒレで作る力強い旨みが突き刺さるよなヒレカツはこの世で"くいしんぼー山中"でしか食べれない至高のメニューだ。
衣やデミグラスソースが旨いのは言うまでもないが、それら全てを引き立て役に徹しさせる主役のヒレが凄すぎる。
このヒレカツを表現する言葉を知らない。
満足度 5++



ハンバーグ
コンソメスープと同様に福永さんの近江牛だけで作られたハンバーグ。
ふんわりと柔らかなタイプだが、決して肉汁が噴き出すようなタイプではない。
素材のポテンシャルを全て表現しただけのハンバーグ。
そしてこれ以上のハンバーグは存在しない。
満足度 5+


"くいしんぼー山中"で食べる福永さんの純但馬血統の近江牛
これを食べずして和牛を語れるか。
いや、語れるわけがない。
全ての食肉関係者が一度は食べるべきだろう。
一度で済まなくなるのは間違いないが。