No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2016年12月14日 くいしんぼー山中


“キム”で福永さんが肥育した純但馬血統の近江牛の屠畜3日後の個体を堪能した翌週、このお店の為に福永さんがセリに一頭も出さない牛を肥育しているという”くいしんぼー山中”へ。
また新しい個体を屠畜してもらっていて、今回は月齢37か月、屠畜2日後の最高の状態で出迎えてくれる。
炙り
フィレミニヨンとリブロースの炙り。
我々素人はヒレの中だとシャトーブリアンが一番旨いと考えてしまうが、「フレッシュな状態ならフィレミニヨンが一番旨い」と山中さんは言う。
その言葉通り、繊細な食感の中から顔を見せる雑味のない味わい。
何より上品すぎるサシの旨さは言葉で出来ない。
また、リブロースの中でも一番サーロイン側も炙ってもらう。
肉の味の濃さで言うと、もはや”くいしんぼー山中”以外では食べたことのないレベル。
雑味が一切なく、ただただ奥歯から歯茎が旨み成分で満たされる。







ステーキ
炙りで食べたフィレミニヨンの隣をヒレステーキに。
柔らかいだけの軟弱なヒレと違い、プリプリとした絶妙な食感があり、濃縮された旨みを奥歯で噛み締める。
ロースはリブロースの中でも一番肩ロース側を焼いてもらう。
その断面は今まで見たことのあるリブロースとは完全に別物。
山中さんの言う「照りと粘り」が見てはっきりと分かる。
一切寝かせることなく、屠畜して解体して運び冷蔵庫に入れるという作業の中で最速の屠畜2日後という鮮度。
その鮮度の賜物がこのピュアな香りと旨み。












冷製コンソメスープ
「旨いコンソメを作るコツはただ一つ。
最高の牛肉をたっぷりと使うこと」
と山中さんは言う。
これほどの牛肉で作られるコンソメの味は舌の全ての感覚を占領する旨みの塊。

ビフカツ
いつものヒレ以外に初めてお願いしたのがカイノミ。
ヒレに付着している塊の部分が、大きなカイノミの中でも飛び抜けて旨い。
ヒレに近い繊維質があるカイノミはジューシーでほど良い噛み応え。
衣とデミグラスソースとパーフェクトなマリアージュを感じさせてくれる。
もちろんヒレカツも。
カイノミより繊細で柔らかいのだが、独特な弾力もある。
衣の中で蒸されたヒレから放たれる滋味深さとデミグラスソースの濃厚さが絶妙過ぎる。






ローストビーフ
我々がお店に着いてから作り始めてくれたローストビーフは、サーロインのランジリ側が使われ、その重量は4キロを超える。
オーブンでじっくりと焼かれたローストビーフは肉汁が馴染むまで少し待ち、そこから切り分けると、断面から見事な火入れが分かる。
サーロインのローストビーフでありながら、心地よい噛み応えは鮮度の良さから。
噛み締める程に強くなる旨み、それが脳まで響く。












ハンバーグ
やはり最後はハンバーグ。
肉が圧倒的に違うのだから、日本一旨いのも納得。

いつもながらの個体の凄さに加えて、お初のメニューもいくつかあり、終始興奮しっぱなし。
福永さんの肥育する純但馬血統の近江牛と山中さんの料理に魅了され、2016年もしっかりとその真髄を味わうことが出来た。
いつも書いてしまうが、この比類なき和牛料理の最高峰を知らない牛肉関係者がいるのであれば、今すぐ食べて欲しい。
この最高峰を知る人間が増えることが、牛肉業界の発展につながると信じて疑わない。