No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2013年11月19日 和田金


海外で最も有名なブランド牛と言えば『神戸ビーフ』だろうが、国内で最高級品質の牛として認知されているのはやはり『松阪牛』だろう。
松阪牛の名声がここまで広がった理由はその圧倒的な品質。
以前は雌の兵庫県産但馬牛を素牛として導入し、それを手塩にかけ長期肥育した中でも5番のものだけがその名前を名乗ることができた。
それが2002年に松阪牛の定義が変更され、兵庫県産純但馬牛という血統、肥育期間そして等級といった縛りが外されてしまったのだ。
雌牛のみで去勢は認められないといった縛りは残っているのは嬉しい限りだが、現在我々が一般的に口にする松阪牛は、かつての名残をあまり残していないものが多いのかもしれない。
もちろん、それが良いとか悪いということではなく、そういった定義の牛が現在の松阪牛なのだ。
それならば昔ながらの松阪牛を食べてみたいと思う肉好きは多いだろうが、それはある程度可能である。
松阪牛の中には特産松阪牛と呼ばれるものがあり、兵庫県産但馬牛を素牛とし900日以上の肥育を条件としている。
これは5番という等級縛りを除けば、昔の松阪牛の定義と同じなのだ。
ちなみに特産松阪牛にA5やA4といった等級の表示は一切ない。
これは雌牛であり血統や肥育期間の縛りを満たす松阪牛であれば、等級などもはや関係ないという自信の表れなのだと思う。
しかしながらこの特産松阪牛松阪牛全体の中でも非常に少なく貴重なものとなっている。
前置きが非常に長くなってしまったが、この貴重な特産松阪牛を自社牧場で2千頭以上肥育し、お店で提供し続けている脅威のすき焼き屋さんが松阪に存在するのだ。
それが"和田金"だ。
昔ながらの旅館のような作りのお店に入るとお店の方に丁寧に部屋に案内される。
部屋に入ると、まずテーブルにセットされた炭に気持ちが高ぶる。

牛肉の塩蒸し
昔ながらの料理なのだろう、肉本来の旨み感じる料理と言うよりは保存食といった印象。
もちろん悪くはなく普通。
満足度 2

肉団子
松阪牛を使った肉団子とはどんなものなのだろうか!という期待があったが、運ばれてきたのは家庭的な何の特徴も感じられない肉団子。
もちろん悪くはなく普通。
満足度 2

きざみ炙り
前菜の中では最も肉らしい原型をとどめているが、それが幸いし、肉の味わいがある。
満足度 3

一応頼んだ前菜は予想の範囲内のできで、いよいよここからが本番だ。
網焼き(松)
網焼きは松竹とあるランクの中で上の松をセレクト。
赤身の強いシャトーブリアンは、特製のタレに浸けられてから網に乗せられる。
炭の火力は思ったほど強くなく、じわじわと火が入っていく。
肉はさすがに旨い。
ホロホロとした肉繊維の食感は感じられないが、味わいはある。
ただ、当日我々を担当してくれた仲居さんの焼き加減がどうみても火を入れ過ぎ。
また特製のタレも肉の旨みを際立たせるというよりは覆い隠すような感じで、素材の良さを削ってしまっているような印象を受ける。
自分で焼いて塩で味付けして食べてみたいお肉だ。
満足度 4





寿き焼(竹)
"和田金"ではすき焼きを寿き焼と呼ぶ。
寿き焼は松竹梅の3種類があり、一番上の松が品切れだった為に真ん中の竹をセレクト。
運ばれてきたのは2等級位のリブロースで、噂通りすき焼きにしてはかなりの厚切り。
もちろん特産松阪牛なので等級など全く気にならないが、逆に個人的にはサシに拘らずに食べて旨い松阪牛を肥育しているのであろうその姿勢に期待が高まった。
そして肉色は見事な小豆色。
これは今まで食べたことのあるどの特産松阪牛とも違った雰囲気で、とにかく期待は高まるばかり。
仲居さんが砂糖とたまり醤油で仕上げたすき焼きは、今まで食べたことのあるすき焼きとは全く違った食感。
柔らかければ良いわけでは決してないが、さすがにすき焼きのイメージで食べるお肉としては相当硬い。
火をかなりしっかり通していることもあり、肉色から想像していたような味わいの濃厚さも感じにくかった。
一番旨く感じたのは端っこの脂の塊部分。
ここと割下のマリアージュは実に素晴らしい。
とにかく仲居さんが仕上げるすき焼きの難しさを改めて感じさせられた。
満足度 3or4(判断つかず)








松阪の地で老舗として君臨している"和田金"であるが、良くも悪くも地方の老舗という印象が非常に強い。
古き良きものを守り続けているのはしっかりと感じられる。
しかし、私が接した仲居さんだけかもしれないが、サービス精神の感じられないその接客には閉口してしまう場面が多い。
一方、自社の"和田金ファーム"で肥育されている特産松阪牛のポテンシャルを感じつつも、それを全て出し切ってもらうことは出来なかったように感じる。
普段東京でお目にかかる松阪牛とは明らかに違うのは間違いないのだが。
寿き焼(松)が食べれれば、、、別の仲居さんだったなら、、、寿き焼ではなくステーキの方があの肉質が活きたかも、、、
様々な思いを胸をお店を出たが、私は今回"和田金"の本当の素晴らしさを感じることが出来なかったのかもしれない。
あの肉を見て感じた私のイメージでは、もっととんでもないお肉のはずなんだ。
どうしてももう一度食べて確かめたい。
そして、改めて"和田金"の凄さに触れて感動してみたい。