No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2013年11月29日 築地 藤田


八重洲にあるステーキの名店"島"。
その"島"から独立したのが今回訪れた"藤田"だ。
築地市場からほど近く、決して人通りが多いとは言えないような場所に目立った看板もなく、ひっそりと"藤田"は佇んでいる。
知っている者だけがその扉を開ければ良いということなのだろう。
2013年の「いい肉の日」になんとも相応しいお店ではないか。
店内に入ると洒落た内装で緊張しそうになるが、店主の藤田さんの人懐っこい笑顔が緊張をほぐしてくれる。
メニューは基本的に店主のお任せのみで、ステーキの前に様々な料理が出てくる。
目の前は築地市場、そして食べるのが好きそうな店主のイメージどおり、その品数はかなり多い。
湯葉に始まり、筍、サザエ、カニに白子といった具合だ。
どれも手を加えた料理というよりは、素材そのものを前面に押し出したシンプルなものが多い。
もちろん牛肉を使った前菜もあり、この日はヒレのタタキが登場した。
熱によって風味が引き立っており、喉を滑り降りる際にまでその味わいを感じさせてくれる。

いよいよステーキを焼いてもらうが、厚めにカットしてもらったシャトーブリアンは熱源が電気の窯でじっくりと温めるように火入れがされ、仕上げに炭火の上で炙られる。
その食感はプルプルとしていて、どこまでも繊細な仕上がり。
最後に炭火で炙った表面が食感にメリハリを絶妙につけてくれる。
旨みに濃厚さは感じられないが、それを補うには十分な火入れだろう。




食後は店主と肉談義。
「今はお客さんの方が詳しいです。」と謙遜されるが、肉への愛情が詰まった空間が"藤田"にある。
次回は肉だらけのお任せをお願いしてみたいものだ。