No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2018年1月5日 あら皮(神戸)

新年早々の和牛初めはすき焼きだったが、ステーキ初めと炉窯初めはこちらで。
何がここまで違うのだろうか!?
言葉で表現するのが難しい。
いや、本当は自分でもよく分からないのかもしれない。
間違いなく言えることは、ここのステーキが日本一旨いと感じるという事だけだ。
新年にもかかわらず、この日の為に店主が準備してくれたコンソメスープや前菜を食べながらステーキを待つ。
目の前にステーキが運ばれてくるまでの時間、その過程を見て想像して楽しむのが何物にも代えがたい。
店主は無造作に冷蔵庫からサーロインの塊を取り出す。
水質の良い三田地域でじっくりと肥育された三田牛はもちろん純但馬血統。
サシの多寡に重きをおかず、味そのものをとことん追求した本物だ。
その肉肌は艶やかで見事な小豆色。
サーロインの塊に吸い込まれるように包丁が入り、ストッと分厚い肉片が倒れる。
周りの筋を丁寧に落とし、串が打たれ、塩胡椒をまとってから炉窯に投入。
最高級の備長炭の真上でチリチリと表面にメイラード反応が起こる。
何度か場所を変えながら20分ほどじっくりと火が入った。
厚さはだいたい6センチほどだろうか。
断面は吸い込まれそうな濃い肉色。
レアに見えるが、中心の温度は十分に上がっている。
噛んだ瞬間に堰を切った様に押し寄せる旨み。
噛むほどに、混じりけのないその旨みの濃厚さに身体が喜ぶ。
適度に入ったサシは控えめに自己主張しながらも、決して主役である赤身の味を邪魔しない。
この最高の時期に、最高の牛肉を、最高の炉窯で、最高の職人が焼いたステーキ。
これこそが頂点なのかもしれない。