No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2016年9月30日 都内某所

かつて東京青山に”神戸あら皮”の支店が存在したという。
しかもステーキを焼いていたのは山田二郎さんご本人。
小山薫堂さんに「東の二郎は鮨をにぎり、西の二郎は肉を焼く」と言わしめた日本が誇る肉焼きの巨匠である。
東京には山田さんの親戚が経営している”新橋田村町あら皮”があった為、名前には”あら皮”を使用せずに営業していたようだ。
もちろん今はそのステーキ屋は営業していないが、その跡地で営業しているお店には今なお炉窯が残っている。
そして、今回はそんな伝説の炉窯で肉を自分で焼かせてもらった。
もちろん伝説に失礼のないように最高の純但馬牛を用意してだ。

田村さんが肥育した神戸ビーフ(シンシン、ランプ、サーロイン)
個体識別番号1417801815、月齢36か月、雌
血統は丸宮土井-福広土井-菊照土井
岡崎さんが肥育した近江牛(サーロイン)
個体識別番号1341496637、月齢41か月、雌
血統は照忠土井-丸宮土井-光照土井
炉窯はでかい。
“神戸あら皮”や”新橋田村町あら皮”よりも大きく感じる。
以前”トロワフレーシュ”で橋山さんに、”イデア”で菅井さんに教えてもらった事を思い出しながら、そして自分の今までの経験をあわせながら目と耳に全神経を集中して焼き上げる。
シンシン
田村さんのシンシンはレア目をイメージ。
万人受けするような柔らかさはないが、噛むほどに旨みが無限に溢れるような錯覚を覚えるほどの凄さ。







ランプ
生命力に富んだ肉繊維を噛み切ることで肉の旨みが全身を駆け巡る。
飲み込むのが勿体なく感じる程肉の味が濃い。







サーロイン(岡崎さん)
月齢の長さを物語るような肉色の濃さ。
炉窯で火入れを行っても、軟弱な肉のように一瞬で火が中まで入るようなことはない。
ゆっくりと熱が中心に向かって行くようだ。
奥歯から歯茎を伝い、旨みの凝縮したエキスが流れ落ちる。






サーロイン(田村さん)
奥歯で噛んだ瞬間に分かるその違い。
赤身の旨みの凝縮感、肉繊維の隙間に溶け込んだ脂の上品さ、それらのバランスとレベルが恐ろしく高い。
自分で焼いておいてなんだが、正直これより旨いステーキには滅多に出会えない。
素材が段違いで、それを炉窯が更に引き立ててくれる。








伝説の炉窯で和牛の最高峰を焼く。
こんな体験が出来たことが奇跡だ。
心から旨みと感じるステーキ。
この出会いに感謝。