No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

関西肉紀行2013 その1

肉、肉、肉。
肉を追い求めながら生きているが、『肉』を追い求めれば必然的に『牛』にも感心が行き着く。
『肉』しか知らない自分がいて、『牛』を知りたい自分がいる。
そして『牛』から『肉』へ変わる瞬間も。

2013年3月26日早朝、東京駅の新幹線乗り場に私はいた。
自分でも抑えることのできないほど膨らんだ気持ちが、私を黒毛和種の聖地兵庫へ向かわせたのだ。
東京を離れ窓から見える景色が色々変わっても、新神戸駅までの3時間はひたすら『肉』と『牛』の話が弾む。
新神戸駅からまず向かったのは川岸牧場。
川岸牧場は、神戸牛・但馬牛の品評会では数々の輝かしい成績をおさめ、さらに兵庫で稀有な存在である但馬牛の雌だけに拘った肥育を行っている。
早速川岸牧場の見学と行きたいところであるが、すでにお昼の時間を過ぎている。
腹が減っては牛が見れないので、川岸牧場3代目の正樹さんと一緒に川岸牧場のお肉を食べれる喫茶店でランチとなった。
食べた料理については後日詳細を報告させていただくが、外観からしてカフェというより正真正銘の喫茶店だ。
そして、田舎(申し訳ありません)の喫茶店で本物の雌の神戸牛が食べれるという奇跡!
ちなみにお店の入り口には神戸牛の証明書まで貼ってある。
世の中には恐ろしい喫茶店があるものだ。

満腹になったところで、遂に川岸牧場見学の実現である。
私と川岸牧場の間には、私の一方的な想いがある(笑)
これだけ牛肉を食べていると、1年に1度くらい衝撃的な味わいのものに出会う事がある。
そんな時は、個体識別番号等からその牛肉の情報を集めてみるのだが、そんな忘れられない衝撃的な牛肉の1つが川岸牧場の牛肉だった。
しかもその後、別の衝撃的な味わいの牛肉に出会った際に調べた個体も川岸牧場という事があった。
そんな憧れの片思いの相手に遂に出会えたのだ。
今まで見たことのないような清潔感のある牛舎は、抜群の風通しの良さもあって嫌な臭いが全くないものであった。
牛のストレスを無くす為の環境作りは、それだけにとどまらず、牛舎にはモーツアルトが流れている。
そして、肥育されている雌の但馬牛は穏やかな優しい瞳をしているのが印象的だ。
牧場訪問の詳細は近日中にBEEF-LAB.com上での報告とさせていただきたい。


名残惜しさを残しつつ、次に向かったのは正樹さんが営む精肉店"肉処 樹"。
川岸牧場の直営店ということで、販売中の個体に関しては個体識別番号だけでなく血統まで表示している。
川岸牧場の神戸牛・但馬牛を購入できる貴重なお店であり、私は週末に食べるすき焼き用のお肉をお願いした。
今のところ、ネット通販のような環境は整っていないが、電話での注文は出来るようなので、興味のある方は試してみてはいかがだろうか。


川岸さんと別れて向かったのは神戸井相田牧場。
神戸井相田牧場では、去勢の神戸牛・但馬牛の肥育と、播州牛の肥育を行っている。
井相田さんの素牛購入のお話をうかがうと、全国の優良な血統の見識が色々と垣間見れる。
井相田さんの播州牛は、純但馬の血統ではないが、但馬の血を色濃く残した雌牛ばかり。
この日の夜に食べ比べをしたのだが、今後東京でも爆発的に知られるようになることを想像させるものであった。


牧場を2つ見せていただき、夕刻に近づいてきたところで向かったのが精肉店の"旭屋"。
私も何回かお肉を購入したことがあり、ネット通販では有名な精肉店で、貴重な雌の神戸牛・但馬牛に拘っている。
初めて店内を見せていただいたが、入賞牛を多数取り扱っているため、トロフィーなどが所狭しと並んでいる。
ショーケースの中で目を奪われたのが但馬牛のハラミ。
こんな貴重な部位が1,000円以下で販売されているとは!
近所の方が羨ましいが、これも通販で購入可能だそうだ。

精肉店をもう1店。
"マルヨ精肉店"は神戸牛・但馬牛だけでなく、松阪牛近江牛等も取り扱っているお店。
夕方にお邪魔したが、店内はひっきりなしにお客さんが訪れ、非常に賑わっている。
今回見せていただいた精肉店3店ともに言えることだが、精肉店が拘りをもって販売している上に、それを理解しているお客さんが多い。
関西は肉文化が発達していると聞くが、それを直に感じる。

"マルヨ精肉店"から移動中気になるものが目に入る。
何故だが分からないが、口座を作ってお金を預けたくなる銀行発見。
肉資金の管理に持ってこいだな。

たらふく『牛』や『肉』を見た後は、やっとと食事である。
"マルヨ精肉店"直営の焼肉屋さんである"かつじい"へ。
生産者まで拘った仕入れを行っている中で、近江牛松阪牛播州牛の同じ部位で食べ比べを楽しんだり、お膝元で神戸牛を食べる。
また加古川の名物である『かつめし』も初体験。

たらふく食べたところで、今度は加古川駅から新快速に乗り込み、一路大阪へ。
どうしても食べたかったお店が北新地にある。
それは窯焼きステーキの"福多亭"。
料理長は元々はフレンチのシェフだったようで、この"福多亭"のオープンにあわせて、"あら皮"、"かわむら"等の高級ステーキ屋さんを食べ歩いたそうだ。
ここでは、以前から噂に聞いていて食べてみたかった、某問屋さんが手掛けている『石垣島で肥育した純但馬血統』のシャトーブリアンを。

帰宅ラッシュの新快速に乗り込み、宿泊地の姫路に到着した時には子の正刻。
『肉』と『牛』にまみれた1日が終わった。
この日1日を思い返しては興奮し、そして翌日の予定に胸躍らせ、ベットに入った。